(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
来年3月の韓国大統領選挙の有力候補と目されている李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が、7月1日、正式に出馬を表明した。与党「共に民主党」の中では非主流派に属するが、現在、与党陣営の中では最有力視され、世論調査でも野党系の候補、尹錫悦(ユン・ヨクヨル)前検事総長とデッドヒートを繰り広げている。
ところがこの李在明氏の歴史認識を巡り、いま韓国政界で大論争が巻き起こっている。
韓国は「親日勢力が米占領軍と合作」して出来た国
きっかけは、李氏が出馬表明の後に、出身地の慶尚北道安東にある「李陸史(イ・ユクサ)文學館」を訪れた際の発言だった。
「大韓民国は他国の政権樹立段階とは異なり、親日清算ができない状態で親日勢力が米占領軍と合作し、再びその支配体制をそのまま維持した」
「清潔な国としてスタートできなかった」
李氏はこんな発言を披露したのだった。
これの発言は韓国メディアも大きく報じた。「朝鮮日報」は「『大韓民国は親日勢力によって建国』『米軍は占領軍』という認識を明確にしたもので、これによって大統領選挙で歴史論争に火が付く見通しとなった」と、その発言の異様さを指摘した。
韓国大統領選挙は、李在明氏の発言を契機にまずは歴史認識論争へと発展していきそうな気配である。