アマゾンに人々を驚かせ、あるいは恐れさせる巨大生物が生息していることは事実だが、その恐怖と巨大さがとんでもない物語を生み、語り継がれるのがまたアマゾンなのだ。

「人の背丈ほどもある世界最大の葉をつけた植物を発見」「アマゾン伝説の魔物、マッピングワリの頭骨を発見」と伝えた当時の現地の新聞。世界最大の葉は、後にブラジル国立の研究機関で現物を見たが、「自生地は保護のため明かせない」と言われた。(山根一眞所蔵資料)
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「100mの大蛇」はこんな大きさ

 それにしても、「100mの大蛇がいた」と真顔で話した仁科さんといい、奥地に「100mの大蛇がいる」と聞き大枚をはたいて現地に飛んでしまった私といい、その発言や行動は、今になって、「100m」というスケールをイメージできなかったことに由来していたのだと理解した。

 地球上には恐竜という超巨大サイズの爬虫類がいた。恐竜は6600万年前、直径10kmの小惑星が衝突し地球が火の玉のようになり絶滅したが、その最大種、南米、アルゼンチンで化石が発見されたアルゼンチノサウルス(学名:Argentinosaurus Bonaparte, et Coria,1993)でさえ推定全長30~45mだ(推定体重80~100トン)。アルゼンチノサウルスは草食恐竜なので繁茂した植物を食べて生き延びていたのだろうが、アナコンダのような大蛇は肉食だ。100mの大蛇が生存し続けるだけの捕食動物などいない。

「100m」はレクサスLSを19台並べた長さだ。アルゼンチノサウルスと比較しても100mの大蛇は巨大すぎる。もし存在するなら、頭部だけでもクルマ1台分のサイズになるだろう。(筆者作図)

 人は、「巨大」という表現を正しい長さの認識なしに、つい、区切りのよい巨大数として「100」と口にするのだ。それを聞いた者も(私を含めて)「巨大=100」を受容してしまいがちなのではないか。

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 奥地の100mの大蛇探しからおよそ10年が過ぎ、私が巨大蛇という魔物の世界に再び触れることはもはやないと思っていた。ところが、その魔物に再び直面することになったのである。

「軍隊1個中隊が出て機関銃で殲滅した大蛇」「マナウスの空港に飾ってあったその写真」と同じと思われる大サイズの古びた写真をマナウス市で手渡されたのである。(続く)

◎(連載)【山根一眞の万有探査】「大蛇」の恐怖と魅力と「伝説」
(1)逃走事件のヘビより巨大だった我が家の4メートル「アナコンダ」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65827
(2)『星の王子さま』に登場する「象を飲み込む大蛇」の誤認
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65845

長年物置に保管したままだった4m超のアナコンダの皮を伸ばしての撮影後、剥れ落ちた鱗が床に散らばっていた(前々回記事「逃走事件のヘビより巨大だった我が家の4メートル『アナコンダ』」を参照)。接写したところ構造色のような色を放っていた。「脱皮殻だろう」という意見があったが、これは現地人がワニ革のように加工品の材料として売るために剥いで干した皮だ。(撮影・山根一眞)