米フロリダ州で2021年7月9~18日に毎年恒例の、大増殖している外来種のアジア産ニシキヘビ駆除のための捕獲コンテストが開催される。6月3日に行われた捕獲のデモンストレーションの様子(資料写真、写真:AP/アフロ)

(山根 一眞:ノンフィクション作家)

 2021年5月6日。横浜市の戸塚警察署管内で、体長3mの大蛇、アミメニシキヘビが逃げ出した。周辺地域の人々は震撼し、警察や消防団が周辺を捜索し続けたが見つからず、17日目にやっと専門家によって逃げ出したアパートの屋根裏で身柄が確保された。周辺地域の皆さんはやっと安堵した。

 人々は「迷惑なヤツだ」「けしからん」と口にしたが、一方で、飼育者が提供した写真を大きく掲載したスマホニュースにかじりついていた。大蛇事件は、新型コロナにうんざりしていた人々の心を奪っていた感がある。酒場が開いていれば格好の酒の肴になっていただろう。

 私も、あの横浜の事件が今も頭から離れず、これを契機に人と大蛇の関係を俯瞰してみようと思い立った。

 6月10日。3mものアミメニシキヘビを飼育していたアパートの住人、24歳の男性は、戸塚警察署によって動物愛護法違反容疑で書類送検され事件は一区切りついたが、確保後のヘビの写真も大きく報じられたので、圧倒的多数のヘビ嫌い人々は「大きなヘビは怖い」という思いをより強くしただろう。

 ヘビは世界に3000種いて、その25%が毒蛇だ。

 ヘビが恐れられる最大の理由は、咬みつかれれば毒によって命を失うことにある。「クレオパトラは毒蛇に自らを咬ませて自殺した」という伝説が2000年以上も語り継がれてきたのも、ヘビの猛毒という恐怖ゆえだ。日本WHO協会(民間法人)は、世界では、「ヘビによる咬傷で毎年8万1000人から13万人の人々が死亡している」と伝えているが、日本では、マムシ、沖縄のハブによる死者数は年間10人前後にすぎず、これはハチに刺されての死亡数よりはるかに低いのだが。