電線に止まるスズメ(写真提供:三上修、以下同)

 電柱に巣を作り、電線に止まっている鳥たち。私たちにとってなじみがある日常的な光景だが、上を見てどんな鳥が電線のどこに止まっているか、鳥たちの様子をじっくり見たことがあるだろうか。

 著者は鳥類学者だが、本書のもうひとつの主役は電柱・電線だ。鳥は電線に止まって何をしているのか。どんな鳥が止まっているのか。電線の上の方か下の方か、真ん中かはじっこか──。実は、止まりたい電線の場所にも鳥の種によって好みがある。

 鳥の観察や計測、研究方法とその難しさ、都市に適応していく鳥たち、巣を作る鳥と電力会社の闘いについて、『電柱鳥類学-スズメはどこに止まっている?』(岩波科学ライブラリー)の著者、三上修・北海道教育大学函館校教授に話を聞いた。(聞き手:鈴木 皓子 シード・プランニング研究員)

──スズメやカラスが電線に並んで止まっている様子はよく目にします。どんな鳥が止まっているのでしょうか。その鳥たちは電線に止まって一体何をしているのでしょうか。

三上修教授(以下、三上):まず、電線に止まる鳥と止まらない鳥がいます。その違いをもたらすものは主に次の3つです。

 まず生息域に電線があるかどうか。人が住んでいないような山奥や海で暮らす鳥の生息圏内には、そもそも電線がないので止まることがありません。

 次に、電線に止まることができるかどうか。生息域内に電線があっても、水かきを持ったカモのように、足の構造上、電線をつかんで止まれない種がいます。

 そして、電線に止まりたいかどうか。例えば、ホオジロという鳥は目立つところに止まって鳴く習性があるので、電線にもよく止まってさえずります。一方、ウグイスは藪の中にいることが多く、目立つ場所にはめったに出てこないので、電線に止まってさえずるのは、かなり珍しいことといえます。

 そのような理由から、町中で電線に止まる鳥は多くて50種程度になります。

 さらに、その中でも電線によく止まる鳥と、ごくまれにしか止まらない鳥がいます。電線によく止まる鳥の1位はやはりスズメ。次いで、ムクドリやハシブトガラス、ハシボソガラス(普段は「カラス」として一括りにされがちだが、日本の町中で見るカラスはこの2種)、キジバト、ドバト、ヒヨドリなどがよく電線に止まります。

 季節によっても違いがあって、春夏にしか見られないツバメ、秋冬にしか見られないツグミやジョウビタキといった鳥がいます。これらは、その季節にしか日本にいないので、電線に見られるのもその時期だけになります。

 ご質問の「鳥がなぜ電線の止まるのか」は、最終的には鳥に聞かなければわかりませんが、いくつかの鳥は見晴らしのいい安全な止まり木として使っているのだと思います。

 例えば、シジュウカラは電線でよくさえずりますが、周囲に遮蔽物がないので声がよく通るでしょうし、メスに自分の姿をアピールすることにもなります。他に「ねぐらに入る前の集合場所」として電線を使う鳥もいます。カラスの場合は、嘴だけで電線にぶら下がるなど、遊びの場としても利用しています。鳥ごとに、その時々でいろいろな使い方をしていると思います。