ヘビに対するもう一つの恐怖が、巨大さだ。

 巨大ヘビに出遭えば、巻き付かれて絞め殺され、丸呑みにされるという恐怖を多くの人が抱いている。日本では2012年に茨城県のペットショップ経営者の父親が体長6.5mのアミメニシキヘビに殺されたと思われる事件があった。この特殊な事故以外には発生していないが、横浜でアミメニシキヘビが脱走した際にはこの死亡事件が繰り返し報じられていた。

 つまり、「毒蛇」や「大蛇」に対する恐怖は、日本人についてはかなり実態とかけ離れている。

 その「大蛇」は、動物学や生態学の枠におさまらない文化的に特別な存在という面がある。「大蛇」は人に畏敬の念を抱かせ、しばしば信仰の対象にもなってきた面も見逃せない。

逃走ヘビより大きかった!

 脱走ニシキヘビのニュースに接し、私も飼い主の無責任さに「ケシカラン」と口にしたが、一方、「わが家の物置きの大蛇はもっと大きいんじゃないか」と思い起こしてしまった。

「ヘビを見せたら即離婚よ!」と言っていたヘビ大嫌い妻が寝入った深夜、その大蛇をこっそりと引っ張り出し、自宅の廊下で伸ばしてみた。長さを測ったところ4m超だった。横浜の逃走ヘビより1mも大きく、うちのはこんなに巨大だったのかと我ながらちょっとブルった。

 とはいえ、安心してほしい。それはブラジルのアマゾン地方産のオオアナコンダから剥(は)いだ全身の「皮」で、生きた大蛇ではないからだ。

久々に引っ張り出したオオアナコンダの皮。巻物のように巻いて保存してあった。(撮影・山根一眞)