その後、アマゾンの日本人移住者たちの50年間にわたる開拓・冒険史を書くため、1979年に再訪している。当時、子や孫の世代まで含めると、アマゾンの日本人、日系人の数は1万人にのぼっていた。

 そういう移住者たちを、アマゾン河口の町、ベレンをふり出しに3500km離れた最奥地まで、小型飛行機を乗り継ぎながら、1日の休みなく40日間インタビューして歩いたのだが、その途上で訪ねた日本人移住者が、「土産に持っていきなさい」とプレゼントしてくれたのが、この巻物状のアナコンダの皮だった。

1979年のアマゾン日本人移住50周年記念として出版した開拓冒険ノンフィクション『アマゾンで日本人はガランチードと呼ばれた』(内田老鶴圃新社刊)
この本は1987年に『アマゾン入門』(文藝春秋刊)として再出版された。現地の友人に「表紙写真に焼畑農業のための“山焼き”の写真を使いたい」と話していたが、現地に着くなり伐採済みの彼の所有地である密林に案内され、2km四方に火をつけ、「さぁ撮って」と言われたのには驚いた(撮影・山根一眞)

牛を巻き殺して食べることも

 現地では、アナコンダを「スクリュー」「スクルージュ」などと呼んでいるが、ブラジルには3種、ボリビアに1種いて、最大のものがアマゾンを中心に生息している「オオアナコンダ」(学名:Eunectes murinus, Linnaeus 1758))だ。

 学名の「Eunectes」はギリシア語の「εὐνήκτης」(泳ぎの名手)の意味。私の皮がこれだ。

 アナコンダは重量が大きいため地上では活動が思うようにいかないため、浮力が働く水の中にいることが多い。川岸に水を飲みに来るほ乳類(カピパラやシカなど)を待ち伏せし、巻きつき絞め殺す。尾を水中林に巻き付けているので、大きな獲物をウインチのように水中に引きずりこむことができ、殺した獲物を丸呑みにするのである。大きなアナコンダは牛すら巻き殺して食べるという。恐ろしき「泳ぎの名手」なのだ。