この話は1972年のアマゾン取材時にもあちこちで耳にしていた。

 その写真が、アマゾン中流の都市、アマゾナス州の州都、マナウスの空港にしばらく飾ってあったのだそうだ。仁科さんは「20年前に見た」と話しており、当時ですら四半世紀も前の話で写真を探すことなど不可能だった。

 まだネットなど影も形もない時代ゆえ、日本でのブラジルの情報が乏しかったからだろう。ブラジル、アマゾンの人たちは(在住日本人も日本人移住者も)、何ごとにもスケールの小さな日本在住の日本人に対して、大げさな話をして驚かせることを喜びとしていた感がある。

 1979年の取材時にも、アマゾン中流の町、アマゾナス州のマナウス市(当時の推定人口60万人、2014年には202万人)で、こんな話を聞き、拙著で紹介している。

「つい最近、川遊びで水に飛び込んだ19歳のインド人の青年が浮かび上がってこなかった。大ナマズに飲み込まれたんです。何千本(?)という剣山のような歯があるので、呑み込まれたら抜けない。家族がインドから駆けつけたけど、かわいそうなことをしました」

 アマゾンにはナマズの仲間が多く、最大のものが体長3m、重さ200kgにもなる、ピライーバ(学名:Brachyplatystoma filamentosum, Lichtenstein,1819)だ。大きいものでは口を開けると40×50cmになるため、嘘とは言い切れない話だった。

(注)学名は斜体で表記するルールですが、本記事では表記制約から斜体で表記していません。

100mの大蛇が出没する現地へ、双発機をチャーター

「軍隊が出て殲滅した」という100mの大蛇話から15年。1994年7月、取材で訪ねた何度目かのマナウスで、私と同世代のマナウス在住の友人(日本人移住者)が、とんでもない話を口にしたのだ。

「最近奥地から戻ってきた者に聞いたんですが、100mの大蛇が出没している場所があるそうです」

 またかと思ったが、昔の話ではなく、「今、いる」というのだ。