がんになったことを隠し、ひとりで治療を受けていたミエコさんは、最期に多くの親戚を突然巻き込んで亡くなった。死を目前にしても頼る人がいない、家族がいても頼りたくないなど「おひとりさま」で病気を抱える患者本人は、どうしたらいいのだろうか。
2006年から「卵巣がん体験者の会スマイリー」の代表を務める片木美穂さんは、これまでに約7000件の患者相談を受けてきた。「おひとりさま」でがんを患った時にどうすればよいのか、片木さんに聞いた。(聞き手・構成:坂元希美)
高齢の親に話すタイミングがわからない
――卵巣がん患者さんの相談の中で、身寄りがなくひとりで治療を受ける人や、ミエコさんのように頼る家族がいない人、家庭内で孤立しているような患者はおられますか。
片木美穂(以下、片木) 卵巣がんの患者会なので女性の患者さんばかりですが、女性に限ったことではないでしょうね。実際に身寄りがないという人もいますが、独身で親と長く別居している人、遠方に住んでいる高齢の親に知らせられないというケースもあります。それに加えて配偶者や家族がいても、自分ひとりで抱えている人がけっこうおられます。自分ががんになったことや経過を周りに隠す人は、すごく多いんです。それが痛みやしんどさが大きくなって、自分自身のコントロールがかなり難しくなってきた時期に、誰にどう助けてと言っていいのかわからない、となってご相談を受けることが多いですね。
「高齢の親に、がんになったことをどうやって知らせたらいいでしょうか?」という相談はかなりあります。患者さんご自身の残り時間がかなり少なくなって、親が受け止められないだろうからとぎりぎりまで伝えずにいて、どう話していいかわからないままにホスピスに入り、そこで初めて親に知らせて、卒倒するほどびっくりされたというケースも年に1、2件はあります。親より先に死ぬ可能性が高いとなると、悲しませたくないという人が多いのです。