「迷惑をかける」を恐れる患者たち

――パートナーや自分の家族に何も報告や相談をしない、「家庭内おひとりさま」患者さんの話も聞きます。

片木 生きている人に迷惑をかけたくない、かけてはならないと考えたり、かわいそうと思われたくないのでしょうね。「迷惑をかける」ことを極端に恐れている人が多い印象があります。そういう人は、とにかく早めに話したほうがいいと私は勧めています。初発であれば根治できることもありますが、卵巣がんは再発すると寛解する割合は非常に低いですから、再発した時、あるいは別のがんになった時が家族や友人など関係者に話すタイミングです。生き延びられたらそれでOKですし、それでも人並みには生きていくのが困難になることもありますから。

 私は、そういう患者さんに「迷惑ってどういうことだと思う?」と話すんですよね。「日常のことができなくなった」「しんどい、不自由だから助けて」と言って、「じゃあサポートするよ」と言ってもらえることは迷惑じゃなくて、理解した上での協力ですよねって。だから、あらかじめ起こり得ることを説明しておいて、してほしいことや手伝ってほしいことを伝えて、いいよと相手が言ってくれたら、それを引き受けるのは相手の責任ですから、迷惑をかけていると思う必要はないと思います。知っておくべきことを共有しないまま、緊急事態に巻き込む方が、家族や関係者に迷惑をかけることになるのではないでしょうか。家族も伴走していく中で受け止める準備や、気持ちの整理や覚悟をする時間が必要なんですよね。

 ある患者さんの旦那さんが相談に来られたのですが、奥さんが再発して治療中だということにまったく気づいていなかったそうです。ずっとカツラでいるから、がんの治療をしたら毛が生えてこないんだなあと思っていて。奥さんが救急搬送されて、初めて残り時間が少ないと知って、とても狼狽しておられました。

 私はお話を聞いていて、「旦那さんが元から無関心・無神経な人だから、奥さんは言っても理解してもらえないだろうと思ったんだろうなあ」と感じましたが、急に妻を亡くすという現実を突き付けられ、なんの準備もできていない夫はやはり気の毒だと思いました。健康なうちから家庭を顧みなかったり、自分をいたわってくれない家族に言いたくない気持ちもわかるのですが、やはり言っておいた方がよいと思います。患者に関係する人たちにも、覚悟をする機会と時間が必要なんです。