東京五輪の準備にかかる費用は、総額約3兆円に上る。周辺の費用まで計上すると、もっと多くなるかもしれない。しかし、日銀の試算によれば、経済効果が33兆円になるという。つまり、11倍になって戻ってくるのであり、この数字を私も使って、都知事の私は3兆円の支出を擁護した。

 これだけの一大イベントになると、多くの利権が絡むのは当然である。利権には、どす黒い権力闘争が伴う。元総理の森氏の調整力が不可欠な場面が出てくるのは当然である。

 経済的見返りを前提にして、多くの企業がスポンサーになった。そのスポンサーであるトヨタやJR東日本などが今回、森発言を批判したことも森辞任の引き金になった。とくに、放映権を持つアメリカのテレビ局NBCが公然と森退任を求めたことが決定打だったと言ってもよい。

利権消失を恐れた勢力が知事追い落としに

 経費負担については、主催都市である東京都と国との対立が生じるのは当然である。たとえば、新国立競技場建設問題である。国立であるから、国が経費を出すのは当然のはずだが、私が都知事になったときには、建設費1500億円(その後、経費はもっと膨れ上がったが)の3分の1の500億円を東京都が支払うことにされていた。

 しかし、それを明記した公式文書も何もない。当時の下村博文文科大臣と交渉したが埒が明かない。そこで、私は新国立競技場建設に伴う数多くの問題点を指摘した。その結果、世論の動向を気にする安倍晋三首相は、2500億円という巨額の経費のかかる当初のザハ・ハディド案を撤回したのである。2015年7月17日のことである。

 この建設計画の変更によって利権が損なわれた人たちが私の追い落としを画策するのは当然であり、彼らの意図は1年後に成就する。

 一部の報道によれば、東京都が3分の1の建設費を出すことは、猪瀬都知事と下村文科大臣の間の密約だったという。私は、国側と協議をして、最終的に都の負担を4分の1にすることで、この問題を決着させた。