(舛添 要一:国際政治学者)
菅首相の長男による総務省官僚の接待問題が政権を揺るがしている。幹部を中心に11人の総務官僚が、国家公務員倫理規定に違反したとして減給などの処分の対象になった。38回の接待のうち、7回が、新型コロナウイルスの感染が続いていた昨年7月以降であった。
また、山田真貴子内閣広報官は、総務審議官時代に7万4000円を超える接待を受けていたことが判明し、月額給与の10分の6を自主返納することになった。
携帯料金値下げにふるさと納税、総務省マターが多い菅首相の目玉政策
規定では利害関係者からの接待や金品贈与は禁止されているが、菅首相長男が勤務する「東北新社」やその関連会社は放送などが業務であり、利害関係者に当たる。
単純に考えれば、総務大臣、官房長官、内閣総理大臣を歴任した菅氏の長男の誘いを、総務省の役人が断るわけにはいかなかったのであろう。この長男は、菅総務大臣秘書官も務めた人物である。重要なのは、接待によって放送行政が歪められたかどうかという問題である。
総務省は放送業務を認定するという絶大な権限を持つので、テレビ局などは頭が上がらない。携帯電話料金値下げ、ふるさと納税など、菅首相の目玉政策は総務省が許認可権限を握っている。菅氏の長男を使って総務省に接近したがる業者が出てくるのは当然である。
また、農水省は、贈収賄容疑で起訴された吉川貴盛元農水相と鶏卵生産大手「アキタフーズ」との会食に同席した幹部職員6人を処分した。大臣に同席を求められれば断るわけにはいかないだろうが、これもまた、総務省と同じような構図である。