批判を受けて金大法院長は、押し寄せた記者団を前に「理由がどうであれ、林判事と、失望感を抱かせた全ての方々に深い謝罪を申し上げる」と謝罪した。ただ「政界の顔色を窺った」との指摘や今後の去就には触れなかった。

 林部長判事と金大法院長、どちらが深い傷を負ったかと言えば、間違いなく後者だ。

金命洙氏に三権分立を守る意思はない

「弾劾しようとあれほど騒いでいるのに私が辞表を受理したと言えば、国会からどんな声を聞くだろうか」——林部長判事に対して金命洙大法院長が述べたこの言葉は、三権分立を守り、部下が公平で法に従った判決を下せるように組織を守るべき立場の人物が発したものとは信じがたい。

 元老憲法学者のホ・ヨン慶熙大学客員教授は「大法院長の資格がないことを自身の言葉で立証した」(「中央日報」社説より)と批判している。

 大法院長のウソは批判されてしかるべきだが、それ以前の問題としても、国会が一介の判事を弾劾しようというのもあまりに強引だ。

 大法院は、「弾劾手続きに関しては国会と憲法裁判所に権限があり、大法院がこれについて立場を表すのは適切でない」と議会による弾劾の動きを傍観している。もちろん義務違反や非行があった裁判官への弾劾はあってしかるべきだが、韓国でも最高裁判事でもない、一線の裁判官に弾劾訴追案が発議されるのは韓国の憲政史上初という。

 しかも前述のように、林部長判事は、弾劾の根拠となる判決について、起訴され、一審で無罪となっている。裁判で有罪にならなかったからといって、「では国会力で糾弾してやる」ということで弾劾に出ているのだ。これは「政権の意に沿わない判決」をなんとしてでもひっくり返そうという強い意思の現れだ。三権分立もなにもあったものではない。