もっとも、共に民主党議員の中にも真っ当な判断をした議員もわずかにいるらしい。弾劾発議に同調(161人)しなかった議員が20余名いるのだという。
ところがその彼らにも、与党議員から批判の声が飛んでいるようだ。これら議員に対し「反文ではないのか」「党から除名すべき」など過激な非難が党員掲示板などに寄せられたという。もはや裁判官の弾劾が政治抗争の一環になっている。民主国家の司法とはとても信じがたい状況である。
「ウソの名手」
金大法院長の「ウソ」について、野党「国民の力」の金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員長は、「善悪を判断する大法院長が『ウソの名手』だといえるのは国家的災難である」と非難した。判事の「弾劾発言」暴露が出た直後、金大法院長と大法院は「そのような事実はない」と否認したが、自身の肉声が公開されると「9カ月前のあいまいな記憶に依存して違う答弁をしたことを申し訳なく思う」と謝罪した。録音の記録から見ると金大法院長は少なくとも6回「弾劾」という言葉を口にした。明らかに「弾劾」という動きを意識した発言であったはずである。それでも「あいまいな記憶である」といったことも「ウソ」であろう。
私も行政機関で勤務した経験があるが、ウソをつければ、必ずつかれた側は反撃してくる。ウソは絶対にバレる。そういう認識で、「ウソだけは決してつくまい」と肝に銘じて仕事に当たってきた。それが行政府や司法府において仕事をする者にとっては当たり前の態度だと思ってきた。
ところが韓国の状況はどうか。権力のトップにいる人間がどうして平気で「ウソ」をつけるのか不思議である。それは、これまで不都合なことをもみ消してきた文在寅政権の体質の反映なのかもしれない。しかし、もみ消しもいよいよ限界に来ているのかもしれない。正義連前理事長・尹美香(ユン・ミヒャン)氏に対する元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏による告発や、朴元淳ソウル市長のセクハラ暴露など、最近内部告発が頻発している状況を見るとそう思わずにいられない。