(立花 志音:在韓ライター)
「ママ見て、この歌、日本語だよ」
「ママ」以外の言葉は韓国語である。小学1年生の娘がYouTubeのショート動画を見せに来た。韓国の人気ガールズグループ「NewJeans」のメンバー、ハニが松田聖子の「青い珊瑚礁」を歌っている姿だった。
6月の終わりに行われたNewJeansの東京ドーム公演で、自分たちの持ち歌とは別に、昭和の大ヒット曲である松田聖子の「青い珊瑚礁」と、80年代シティポップの代表格、竹内まりやの「Plastic Love」が歌われたという。
3年ほど前から、韓国ではシティポップが大流行していて、筆者の息子が一時期「真夜中のドア」という筆者が知らない曲を毎日かけていた。
東京ドームで起こった話なのに、次の日には韓国のネット上で大騒ぎになっていた。
「一瞬で昭和の時代を召喚した松田聖子と青い珊瑚礁」
この「召喚」は韓国人がよく使う言葉だ。本来の意味以外にも、人を呼び出す時や、物事や思い出が一気に呼び戻される時に乱用されている。
こうした青い珊瑚礁シンドロームは、韓国で日に日に膨らんでいった。関連記事や解説映像が雨後のタケノコのように発生し、日本の地上波で放送された歌番組でも、この歌をお披露目しているハニの姿を見た。
韓国と日本の狭間に身を置いて20年、日本が大好きな夫の昔話や、1988年頃から韓国に関わっている先輩方のお話もいろいろと聞いてきたが、こんなにも日本と韓国の距離が近いを感じることは初めてだ。
NewJeansを見ていると90年代の日本のダンス&ボーカルグループ「SPEED」をなんとなく彷彿させる。似ているとか、パクリだとか言われていることもあったようだが、筆者が思ったことはただ、このアイドルグループのプロデューサーは昔の日本が本当に好きだったんだなということである。