「国民の力」は金命洙院長に対し「政権と結託した弾劾取引」と規定し、法曹界からも金大法院長に対する弾劾と辞任を求める声が上がっている。国民の力の「弾劾取引真相調査団」は金大法院長と面談し、辞任を要求したが、金大法院長は「より良い裁判所のため、一度頑張ってみる」と辞任を否定した。金命洙氏の辞任は、文大統領が望まないであろう。しかし、文政権への支持率はさらに下がっていくかもしれない。

使命は文政権寄りの裁判所への改革

 いわゆる徴用工判決で、韓国の大法院は新日鉄に、韓国人元徴用工4人に対し約1000万円ずつの損害賠償を命じた。日韓請求権協定で解決済みの問題を根底からひっくり返すこの判決に日本政府が反発すると、韓国政府は「三権分立の原則により行政府は司法府の判断を尊重しなければならない」として突っぱねる態度をとってきた。

『文在寅の謀略―すべて見抜いた』(武藤正敏著、悟空出版)

 だが今回の一件でよく分かった。韓国の「三権分立」は単なる建前で、自分の都合が良い時には前面に押し出し、都合が悪い時には簡単に放り投げられる程度のものでしかないのだ。

 韓国の裁判所は、公平で法に忠実な組織から、政治的信条に基づいた判決をする歪んだ司法組織に変わってしまった。その中核的な役割を果たしているのが金命洙大法院長である。

 金命洙大法院長の改革は裁判所を「文在寅シンパ」に仕立て直そうとするものであり、これは文政権で行われている検察改革とも軌を一にするものがある。文在寅という人権は弁護士出身の大統領の下で、韓国は法の正義のない、政治信条によって差別される国への道を突き進んでいる。なんとも皮肉なものである。