2019年8月、東京2020パラリンピックの1年前セレモニーで顔を合わせた森喜朗・東京五輪・パラリンピック組織委員会会長と官房長官だった菅義偉首相(写真:つのだよしお/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 2月3日、東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」と発言して、大きな批判が内外で巻き起こった。そのため、4日に、森会長は会見を開き、発言を撤回し、謝罪したが、五輪開催懐疑論を深めることになっている。

 それは、五輪開催に全力をあげる菅政権にも逆風となっている。そして、逆風はこれだけではない。

違反したからといって、コロナ患者に懲役刑まで科そうとしていた感染症法改正案

 新型コロナウイルスの感染は減少傾向にあるものの、重症者の増加で医療資源が逼迫し、医療崩壊が危惧されている。そのため、2月2日、菅首相は、栃木県を除く10都府県の緊急事態宣言を1カ月延長した。

 2度目の緊急事態宣言を発したときには、1カ月で終わらせると明言したが、それを実現させることができなかった。今後の感染状況次第だが、予定通りに3月7日に宣言を全面解除できるのかどうかは、まだ定かではない。

 また、3日には、国会では、違反者に過料を科すことを明記した感染症法と特措法の改正案が通過した。本来は、昨年春に緊急事態宣言を発令した後に、問題点を洗い出して、国会で改正の議論をすべきであった。しかし、それを8カ月も怠ってきた国会の責任は重い。そのため、審議も十分ではないまま、拙速で改正案を決めてしまったのである。

 飲食店などは、休業や時短の補償金と罰則とが対になるべきであるし、入院拒否などの患者についても、入院できるだけの病床もない状態でのこの法改正はあまり説得力はない。対象者は「病人」だということを忘れてはならない。病人に懲役刑など論外であり、流石に、この点は与野党の協議で削除された。