(舛添 要一:国際政治学者)
新型コロナウイルスの感染者が、世界で1億人を超え、死者も200万人を突破した。中国武漢での感染の発生から1年以上が経つが、当初予想していたよりもウイルスの感染力が強く、希に見る厳しいパンデミックとなっている。
ワクチン接種で出遅れ
幸いワクチンの開発が順調に行き、欧米の製薬メーカー、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカが開発に成功し、世界への供給が始まっている。効果の面でも、副反応の面でも申し分がなく、とくにファイザーとモデルナはメッセンジャーRNAを活用した新手法が高く評価されている。その他、ロシア、中国、インドでも国産ワクチンが開発されており、細かいデータは公表されていないものの、現時点で大きな問題もなく接種が進んでいる。
しかし、肝心の接種のほうは世界一律では進まない。
1月27日現在で、世界で57カ国、7130万人がコロナ・ワクチンの接種を既に終えている。そのほとんどが欧米先進国や産油国などの豊かな国であるが、G7で日本だけが大きく遅れ、接種が始まっていない。貧しい発展途上国と同じであるが、これらの国も中国、ロシア、インドなどが自国で生産したワクチンを外交の道具として無償配布し始めている。
日本では、治験に基づく承認が迅速に行われた場合でも、最優先の医療従事者に接種が始まるのは3月、高齢者は4月になるという予想が立てられている。しかし、そのスケジュールは、まずは製薬会社からワクチンが契約通りに提供されることが前提である。
ヨーロッパでは、ファイザーもモデルナも生産が間に合わず、契約通りのスケジュールで供給できずに政治問題化している。EUは、EU内で生産したワクチンの域外への輸出を禁止したり、製薬メーカーを相手に訴訟も辞さないと不満を表明したりしている。EUは、8月下旬までに成人人口の7割に接種するという予定であったが、今の状態では実現不可能である。
この供給不足は、当然日本政府の調達スケジュールにも影響する。日本は、ファイザーから今年中に1億4400万回分、アストラゼネカから1億2000万回分(3月までに3000万回分)、モデルナから6月までに4000万回、9月までに追加の1000万回分を供給されることになっている。