昨年10月10日、台北市の総統府前で開かれた建国記念日に当たる「双十節」の式典で演説する蔡英文総統(写真:AP/アフロ)

(ジャーナリスト・吉村 剛史)

 コロナ禍で海外との自由な往来に制約が生じているなか、台湾の蔡英文総統によるツイッターでの「日本語」発信が、日本人の「親台湾」感情の維持に貢献している。

 台湾が巨額の義援金を寄せた東日本大震災から2021年3月で10年を迎えるが、これに先立つ1月23日、台北市では日本側窓口機関が主催し、台湾で最も高いビル「台北101」に「日台友情」などの文字を灯すライトアップイベントを開催。蔡総統はこれに動画でメッセージを寄せ、日台の深い関係を「きずな」(絆)だとし、ツイッターでも「いつまでも日本を応援しています!」などと日本語で発信した。

蔡英文総統が日本語メッセージと共にツイッターに載せた超高層ビル「台北101」のライトアップイベントの様子(蔡英文ツイッター @iingwen より)

 日本語世代による歴史的な絆が消えゆく中、心理的な距離の近さを維持し、良好な日台関係の構築に尽力している印象だが、その一方では課題も山積している。

「台湾と日本はいつまでも固く結ばれている隣人」

 23日夜、台北101のビル中層上部に、「日台友情」「2021年 平安祈願」をはじめ、「台日相伴」(台湾と日本は共にある)、「新的一年 我們携手努力」(新しい1年、手を携えて頑張りましょう)など、中国語と日本語のメッセージが次々に浮かび上がった。半年後に迫ったオリンピック・パラリンピック東京大会の順調な開催を願うメッセージや、「台湾」と「日本」が握手の絵文字で結ばれたものもあり、ビル周辺では携帯電話で熱心に写真を撮る人の姿が見られ、拍手もわきあがった。

 イベントは日本側の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会が東日本大震災から10年になる今年を「日台友情の年」とし、改めて台湾への感謝を伝える複数の行事のひとつとして主催。灯されたメッセージは事前に一般公募して選んだ。

 点灯に際しての式典も開かれ、五輪東京大会出場が決定している台湾のアスリートらも出席。同協会台北事務所の泉裕泰代表(大使に相当)は、自然災害や感染症拡大などの障害にもかかわらず「この10年来、日本は台湾の人たちの友情をずっと胸に刻んできました」と台湾社会に感謝の意を表明し、相互が相手側に寄り添える日台関係を称賛。台湾の李永得文化部長(文化相)もIT技術を利用した交流の推進などに意欲を示したという。