*写真はイメージ

(柳原 三佳・ノンフィクション作家)

 1月19日の昼前、東北自動車道で発生した多重衝突事故。上空から撮影された映像に、多数のトラックや乗用車があちこちで向きを変えて重なり合っている状況が映し出されたときには本当に驚きました。

 その後の報道で、約140台の車が事故に巻き込まれ、死者1名、少なくとも17名の負傷者が出たそうです。

 発生当時、現場周辺は前も見えないほどの激しい地吹雪に見舞われていたとのこと。おそらく複数の車のドライブレコーダーには、その瞬間が記録されているはずですが、多重衝突が発生する直前、いったい何か起こったのでしょうか?

カーナビに記録されていた車の速度と位置情報

 私は長年、「死人に口なし」的な事故を数多く取材してきました。その中で、これまでなら、泣き寝入りせざるを得なかった被害者や遺族が、ドライブレコーダーの普及によって、確実に救われるようになったことを実感しています。

 最近は「あおり運転」の立証などにも使われ、その映像は裁判でも重要な証拠として採用されるようになりました。

 しかし、裁判で有力な証拠となるのは、ドライブレコーダーの映像だけではありません。目的地までのルートや渋滞情報を教えてくれる「カーナビゲーション」の中に、「走行履歴についての詳細な記録」が残っている場合があることをご存じでしょうか。

 実は、GPS(Global Positioning System=全地球測位システム)が搭載されたカーナビには、その車の走行中の速度、そして位置情報が記録されています。具体的に言うと、「緯度、経度、方向等」が、秒単位で残されているのです。

 つまり、事故が発生した前後のカーナビデータを抽出することで、その車が、いつ、どの場所を、時速何キロで走行していたのかを、かなり詳細に再現することができるということです(*ただし、カーナビの機種や設定にもよって異なります)。

 ドライブレコーダーのような「映像」ではありませんが、その数値を現場の図面に落とし込むことで、ドライバーの供述が真実か否かを判断することができるのです。