カーナビデータが加害者の嘘と「赤信号無視」を裏付けた

 実際に、被告人の車に搭載されていたカーナビデータの分析によって、被告人の供述が覆り、赤信号無視が立証された死亡事故があります。

 その事故は、2019年1月22日、静岡県三島市で発生しました。

 交差点で乗用車と原付バイクが衝突し、原付に乗っていた男性(当時50)が死亡したのです。

事故現場となった交差点(遺族提供)

 第一報については、以下の記事に書いた通りです。

『事故死した父の走行ルートが違う! 誤った捜査と報道を覆した家族の執念』https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20190603-00128353/
〈柳原三佳/Yahoo!ニュース個人/2019.6.3配信〉

事故で亡くなられた男性・仲澤勝美さんの祭壇(筆者撮影)

 この事故で父を亡くした遺族(長女)から、私のもとに初めて来たメールには、こう綴られていました。

〈私の父は、青信号の交差点を原付スクーターで直進中、左から来た信号無視の車にはねられて他界しました。ところが事故直後、加害者の女性(当時46)は、「自分は青信号、対向してきたスクーターが急な右折をした」と供述し、警察も私たちに「お父さんが右折した」と言い切ったのです。そして、事故翌日の新聞には、父の原付が右折をしようとしたと書かれていました。でも、通勤ルートからみても、加害者や警察の言う走行ルートはありえません。父がその交差点を右折するはずがないのです〉

 納得できなかった遺族は、事故直後から現場に出向き、懸命に目撃情報などを集め、警察に再捜査を願い出ます。

遺族は必死に目撃情報を募った(写真:遺族提供)

 その結果、防犯カメラの映像などから、亡くなった父親の走行ルートが加害者の供述と食い違うことが裏付けられ、加害者は事故から9日後、過失運転致死傷罪で逮捕。約1年半後、起訴されたのです。

 信号の色に関しては、その後、カーナビのデータの分析と信号サイクルの照合によって、乗用車側が赤信号を無視していたことが明らかとなりました。

 起訴後も赤信号を否認していた被告人本人でしたが、第2回目の公判でその事実を認め、遺族に謝罪。異例の展開となって、裁判は現在も続いています。

(写真:遺族提供)