「毎日仕事のことで頭が一杯で疲弊している」「仕事に行き詰まってどうしていいかわからない」——真面目に仕事に取り組んでいる人ほど、このような悩みを抱えているのではないだろうか。気づけば「仕事」が人生の中で大きな比重を占めていて、息苦しさを感じている。そんな人に、日本を代表するグローバル企業のトップ経験者が「仕事との付き合い方」を明かした『仕事を人生の目的にするな』(平井一夫著、SBクリエイティブ)を参考にしてはいかがだろうか。本書は「何のために働くのか」「いかに働くのか」を通じて、自分軸を持つことの大切さを教えてくれる。
(東野 望:フリーライター)
人生にとって大切なものを優先しよう
著者の平井一夫氏は元ソニー(現ソニーグループ) 社長兼CEO(最高経営責任者)。国際基督教大学(ICU)卒業後にCBS・ソニーに入社し、数々の要職を務めた後、2012年にソニーの社長兼CEOに就任した。当時どん底にあったソニーを再生させた立役者として知られる。現在は、自ら立ち上げた一般社団法人「プロジェクト希望」で子どもたちの支援活動をおこなっている。
輝かしい経歴を持つ筆者のことだから、「意識高い」理論を持っているのでは、と思ったが、彼の考え方は実にシンプルだった。
仕事は自己を滅して従事するものだという考え方もありますが、私は反対です。ほかでもない自分の人生なのですから、まず自分の中での優先順位を大切にすべきでしょう。
自分の人生にとって「大切なもの」「したいこと」は何か。それに順番をつけるというシンプルなものだ。
そして、その「大切なもの」「したいこと」を達成するための手段が「仕事」であり、会社は仕事に対する報酬をもらう「取引相手」だと筆者は語る。
自分を見失わないためにオンとオフは切り分ける
平井氏は旧態依然とした習慣が残る時代でも、やるべきことをやったらさっさと定時に帰っていたという。仕事が人生のすべてという意識になると、ゆくゆくは自分の人生を見失いかねないからだ。
仕事をする時間は、自分の給料分くらいは稼ぐつもりで一生懸命、働く。それが済んだら、さっさと退社して好きなことに時間を使う。オンとオフをきっちり切り替えて、プライベートの時間に仕事が入りこまないようにする。これでいいと思うのです。