1月21日、コロナ対策を含む国家戦略を発表するバイデン大統領(写真:UPI/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 1月20日、バイデン氏が第46代アメリカ大統領に就任した。しかし、その前途には課題が山積している。それは、トランプ前大統領の大きな「負の遺産」を背負わされるからである。

2016年は、歴史に残るポピュリズムの年

 2016年秋、トランプが大統領選挙に勝利したとき、世界に大きな衝撃が走ったが、今振り返って見ると、2016年という年はポピュリズムが猛威を振るった年だと再認識させられる。この年の6月23日には、イギリスの国民投票でEUからのイギリスの離脱が決まっている。

 この4年間、世界はそのポピュリズムの代償を払い続けたが、民主主義の力ではなく、新型コロナウイルスの猛威がこの衆愚政治に終止符を打とうとしている。そのときの雰囲気や感情に流されて、遊び気分で、トランプやBrexitに投票することの愚を、大衆は理解できない。パンデミックで自分の命が危ういとなって初めて、虚偽に基づく扇動から目が覚めてきたのである。

 それが、トランプを選挙で敗北させ、昨年末に土壇場になってイギリスとEUとの離脱交渉をまとめさせたのである。

 4年前のトランプ政権の発足に際して、私の脳裏に浮かんだのはヒトラーと彼を民主的選挙によって政権に就かした当時のドイツの状況である。そして、その類似性に愕然とした(参照、拙著『ヒトラーの正体』)。

 第一次大戦後のドイツは、ヴェルサイユ条約によって、巨額の賠償を科され、領土割譲など民族の誇りを大きく傷つけられた。ヒトラーの演説は、その大衆の不満に訴えたのである。