近視治療用メガネ「クボタメガネ」を装着した窪田製薬ホールディングスの窪田良CEO

 日本を含め、アジア諸国で急速に増加している近視。パソコンやタブレットの使用もあり、2050年には世界の約半数がかかるといわれている疾患だ。現状ではメガネやコンタクトレンズで矯正するか、レーシックなどの手術で視力の回復を図るといった治療が一般的だが、全く別の治療法が生まれるかもしれない。窪田製薬ホールディングスが開発する「クボタメガネ」である。

 メガネのレンズに網膜だけが認識する画像を映し出し、その画像の刺激によって近視の原因となる症状を抑制、治療を目指す仕組みで、据え置き型やヘッドマウントディスプレー型を用いた臨床試験では、既に近視の治療・抑制に効果があるというPOC(概念実証)を獲得している。2020年12月には、満を持してメガネ型のプロトタイプを発表した。

 近視がなくなる日は来るのか──。同社の窪田良CEO(最高経営責任者)に開発状況を聞いた(前回のインタビューはこちら)。

VRゴーグルのような近視治療デバイス

──12月に、近視治療用メガネ「クボタメガネ」のプロトタイプを発表しました。クボタメガネとはどういうメガネなのでしょうか?

窪田良CEO(以下、窪田):一言で言えば、近視の治療や進行の抑制を目的としたメガネです。これまでに据え置き型やヘッドマウントディスプレー型で臨床試験を実施し、効果を実証してきましたが、より小さなメガネ型で同じ効果が得られるか、網膜に刺激を与える時間帯や期間を変更した場合にどういう変化が出るか、クボタメガネによる効果は中長期的にどの程度続くのか──といった点を検証していく予定です。

──報道では、2021年後半にも商品化という話です。

窪田:2021年後半を目指していますが、どこで販売するかはまだ決めていません。というのも、クボタメガネのような機器は国によって扱いが異なります。「近視治療につながるけれども実際はVRゴーグルと同じだよね」と考える国であれば比較的早期に販売ができるかもしれませんが、「あくまでも医療機器なので臨床試験が必要」という国の場合は承認までに時間がかかります。どの国・地域で販売すべきかという点は検討中です。

 ただ、いずれにしても、アジアか東南アジアの国々かなと思っています。近視の有病率は韓国や台湾、中国などの東アジアで高く、近視治療について強いニーズがありますから。

──プロトタイプを見ると、レンズの中心部に部品のようなものがついています。

窪田:それは鏡です。メガネのフレームとレンズの境目に、黒い突起が8つついているのが見えるでしょう。これはLEDで、ここから光を照射し、中心部にある鏡で反射して網膜に画像を映し出します。バッテリーやLEDなどデバイスとしての機構はフレーム側にすべてまとめました。レンズについては、鏡のついた度数なしのレンズと、使用者の近視にあわせた度数入りのレンズを重ねています。

クボタメガネ。レンズの中心部分に鏡がついており、縁にある8つの黒い突起(LED)が発した画像を網膜に投射する

──患者一人ひとりにあったメガネをつくるということですか。

窪田:そうです。近視の状況は患者によって異なりますので、商品化した際にはそれぞれの度数に合ったメガネをつくり、お送りするという形になると思います。

──値段は?

窪田:まだ決めていませんが、数十万円といった価格感だと思います。近視が改善した場合はレンズ交換で対応していくことになるでしょう。ただ、これも保険適用されるかなど、それぞれの国の状況次第で変わります。

──改めて、クボタメガネが近視を治療・矯正する仕組みについて教えてください。