世界の一流研究者が関心を持つ理由

──クボタメガネのターゲットとして、子供を想定しているとのことです。なぜ子供なのでしょうか。

窪田:眼球が成長している段階の方が、近視の治療・抑制効果が高いと考えているからです。通常、眼球は網膜にピントが合った状態で成長していきます。ただ、近視になっている子供は、ある意味で眼球の成長以上に眼軸長が伸びてしまっている。ならば、眼軸長の伸びを抑えつつ、眼球の成長を待てば、焦点と網膜を一致させることが可能です。

 もちろん、POCの段階では眼軸長を短縮させる効果が出ていますので、既に眼球が成長した大人の近視も治療できるかもしれません。最近では、子供だけでなく、大人でも歯科矯正が可能だということが明らかになっています。失われた脳の神経細胞は再生しないと考えられてきましたが、記憶を司る海馬では、大人でもごく少数のニューロンが生じると分かっています。

──医学会における反応はいかがでしょうか。

窪田:2020年11月に、アイルランドのダブリン工科大学と共同研究契約を結びました。今回の契約の共同研究者になっているイアン・フリトクロフト教授は小児眼科の第一人者で、近視が与える公衆衛生への影響や世界保健機関(WHO)による近視調査の基礎となる報告書を作成するなど、近視に関する世界的な権威です。彼がクボタメガネに関心を持ってくれたというのは、それだけ私たちのテクノロジーを面白いと思っているからだと思います。

──クボタメガネの開発体制について教えてください。

窪田:私を含め3人です。眼科領域を手がける米製薬大手で開発本部長を務めていた人間と、米航空宇宙局(NASA)で医療機器を開発していた人間、そして私。このチームで研究や企画、工程管理を手がけています。実際に製品を開発しているのはスイスの企業です。

──少人数ですね。

窪田:スタートアップですから。でも、少人数チームのスピード感がこういった開発を可能にしています。