2.極超音速兵器の特徴
ア.定義
マッハ5以上で飛行する極超音速兵器は、極超音速滑空弾(hypersonic glide vehicle:HGV) と極超音速巡航ミサイル(hypersonic cruise missile:HCM)の2種類に分類される。
それぞれの定義は次のとおりである(出典:米議会調査局報告書2020年8月27日)。
・極超音速滑空弾(HGV)は、ロケットから発射され、標的に向かって滑空する。
・極超音速巡航ミサイル(HCM)は、標的を捕捉した後、高速の空気吸入エンジン(air-breathing engines)または「スクラムジェット(scramjets)」により加速される。
以下、HGVとHCMそれぞれの一般的な飛行パターンの概観を述べる。
イ.極超音速滑空弾(HGV)
HVGは、弾道ミサイルなどで大気圏外に打上げられ、切り離された後、大気圏内をマッハ 5~20の極超音速でスキップや滑空しながらかつ機動しながら標的に接近し、最後はダイブして標的に到達する。
HGVは、大気圏外の宇宙空間に飛び出さずに希薄な大気が残る高高度を飛ぶことにより、弾道ミサイル防衛用の大気圏外迎撃ミサイルを全て無力化する。
また、HGVは、弾道ミサイルとは異なり、弾道軌道を飛行せず、低高度を極超音速で飛行し、目的地に向かう途中で機動することができる。
すなわち、HGVは、その速度、機動性、低高度飛行により敵の探知と防御を難しくする。
そもそも、地上配備レーダーでは、当該空域を低高度で飛行する飛翔体を探知することは物理的に困難である。
地球が湾曲しているため、「レーダー電波の水平線」の下方にある低高度目標を捜索・探知することができない。
下図2は、地上配備のレーダーによる弾道ミサイルとHGVの探知距離の違いを示している。
図3 地上配備レーダーによる弾道ミサイル、HGVの探知距離の比較

この探知の遅れは、意思決定者が対応策を評価するため時間、および防御システムがHVGを(多分たった1回の)迎撃時間を短縮する。ステルス技術を取り入れたHGVの探知・追跡は、より一層挑戦的なものとなるであろう。