(3)中国

ア.全般

 中国の軍事専門家は、中国が極超音速技術の開発を優先する最も重要な理由は、米国の地域ミサイル防衛システムなどの洗練された米国の軍事技術からもたらされる脅威に対抗するためであるとしている。

 特に、中国は、米国の極超音速兵器が中国の核兵器と支援インフラストラクチャーに対して先制的かつ壊滅的な攻撃を行う可能性および米国のミサイル防衛システムによって米国に対して報復攻撃を行う中国の能力が制限される可能性があるかもしれないという懸念を抱いている。

 また、一部の軍事アナリストは、中国が接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略を支援するために「DF-21」および「DF-26」弾道ミサイルと通常弾頭型HGVを組み合わせる可能性があると主張している。

 伝えられるところによると、中国は、極超音速兵器を核弾頭搭載もしくは通常弾頭搭載にするかまたは非核両用にするかについて最終決定を下していないようである。

イ.極超音速兵器プログラム

①DF-17中距離弾道ミサイル(IRBM)

 中国は、HGVを打ち上げるために特別に製造されたDF-17のテストに成功した。米国の情報アナリストは、ミサイルの航続距離は約1000~1500マイルで、2020年に配備される可能性があると評価している。

②DF-41大陸間弾道ミサイル(ICBM)

 また、中国は、DF-41の飛行テストを行った。米国議会委員会の報告によると、これは通常弾頭搭載または核弾頭搭載のHGVを運搬できるようにDF-41を改造している可能性を示唆している。

 したがって、このようなDF-41の改造は、「米国本土に対する[中国の]ロケット軍の核の脅威を大幅に増大させる」と同報告は述べている。

③DF-ZF(HGV)

 中国は、2014年以来少なくとも9回、「DF-ZF」(以前は「WU-14」と呼ばれていた)の飛行テストを実施した。DF-ZFの射程を約1200マイル、そして、ミサイルは 飛行中に「極端な機動」を実行することができることを国防総省関係者が特定したと報じられている。

 米情報機関によって確認はされていないが、一部の軍事アナリストによると、DF-ZFは早ければ2020年に実戦配備されると見込まれている。

④星空2号(HGV)

 国防総省によると、中国は2018年8月に、核弾頭搭載可能なHVGのプロトタイプである「星空2号」(Starry Sky-2またはXing Kong2)の飛行テストに成功した。

 中国は、星空2号が最高速度マッハ6に到達し、着陸前に一連の飛行中の機動性を発揮したと主張している。

 DF-ZFとは異なり、星空2号は、打ち上げ後に動力飛行し、それ自身の衝撃波から派生する揚力を使用する「ウェーブライダー」である。

  一部の報道によると、星空2号は2025年までに実戦配備される可能性がある。 米国当局はこのプログラムについてコメントすることを拒否した。

⑤「凌雲1」HCM

 中国は、2018年5月、国家科学技術展において「凌雲1」(Lingyun-1)の写真とプロトタイプを公開した。

(筆者加筆:中国は、2015年12月に「スクラムジェットエンジンを搭載した飛翔体」の飛行テストを実施したと伝えられていた。また、2018年5月、北京で開かれた国家科学技術展において、2015年12月にテストを行った機体であるとする凌雲1のプロトタイプが公開された。凌雲1は、スクラムジェットエンジンを搭載し、マッハ5以上の極超音速飛行が可能であると報じられている)