尖閣有事を想定した場合、固定または移動レーダーを設置する標高の高い地形がない尖閣周辺空域において、低高度で侵攻するプラットホームを探知・追尾するには、レーダーや各種センサーを搭載した飛行船(Air Ship)または宇宙配備の監視衛星が必要となる。
次に、高速で侵攻するミサイルの撃破について考えてみる。
ミサイルを戦闘機で撃破する場合、少なくとも戦闘機の射撃用火器管制(FCS)レーダーがアクティブ・フェーズド・アレイ(AESA )レーダーであることが必要である。
F-15JのAESAレーダーへの換装を推進するとともに、AESAレーダーを搭載したF-35の整備を推進することが求められる。
あるいは、新たに高速のミサイルを撃破できる運動エネルギー迎撃弾(インターセプター)を開発する必要がある。
さらに、将来の装備化を目指し、電気エネルギーから発生する磁場を利用して弾丸を撃ち出す「電磁レールガン」やレーザーのエネルギーにより対象を破壊する「高出力レーザー兵器」の研究を本格化する必要がある。
③消極防衛作戦とは、重要防護対象の脆弱性を減少し、ミサイル攻撃の影響を局限することである。
ミサイル攻撃に対する脆弱性を軽減する方策の一つは敵に我の重要防護対象の所在を暴露しないことであり、もう一つは爆撃効果を低減することである。
対策としては、 シグネチャ-低減対策(兵器本体から放射される可視光線・高周波(RF)・音響などの物理量を、低減・変質して敵から発見されにくくする)、欺騙、堅固化、分散、重要施設の地下化などがある。
これらの対策は、ミサイル攻撃に限らずあらゆる物理的攻撃、例えば無人攻撃機に対して有効なものである。
わが国のミサイル防衛のみならず防衛作戦全般で欠落していることは消極防衛への取り組みである。重要施設の地下化や堅固化が遅々として進んでいない。
例えば、よく知られている話であるが、日本の航空基地では戦闘機が露天に駐機されている。諸外国では戦闘機は航空機掩体(Hardened aircraft shelter)に格納されているのが常識である。
最後に、いかにミサイル対処能力を強化したとしても、敵のミサイル攻撃を完全に阻止することは不可能であろう。
したがって、敵のミサイルからの爆撃効果を低減するための重要施設の堅固化・地下化に直ちに取り組むことを推奨する。
その際、電磁パルス(EMP)攻撃を想定し、施設のEMP保護シールドを実施することも必要である。