5.わが国のとるべき対応

 わが国のミサイル防衛システムの整備について簡単に私見を述べる。

 同システムの対象となるミサイルには弾道ミサイル、巡航ミサイル(極超音速兵器巡航ミサイルを含む)及び極超音速滑空弾が含まれる。

 一般にミサイル防衛は、攻撃、積極防衛と消極防衛の3つの作戦行動から構成される。

①攻撃作戦とは、ミサイル発射プラットホーム及びその支援組織・システムを破壊、混乱又は無力化するための作戦である。

 わが国は、同盟国である米国との了解の下、敵対国の基地に対する攻撃も含め、攻勢作戦を米軍に依存している。

 ところが、近年の弾道ミサイル脅威の高まりを背景に、抑止力の向上を目的とした専守防衛下の敵地攻撃能力の保有をめぐる議論が行われている。

 そこに、ある意味唐突に近隣諸国が保有する極超音速兵器の脅威が登場してきたのである。

 現時点では極超音速兵器がもたらすわが国の軍事戦略への影響は不確定である。今後の議論を待ちたい。

②積極防衛作戦とは、ミサイルの空中発射プラットホームや海上発射プラットホームまたは飛行中のミサイルを破壊し、ミサイルから重要防護対象を防護することである。

 現行の弾道ミサイル防衛では東京などの政経中枢地域が重要防護対象となっている。

 わが国は2004年度から弾道ミサイル防衛システムの整備を開始した。他方、巡航ミサイルと極超音速滑空弾を対象としたミサイル防衛システムの整備については極端に言えば手付かずである。

 防衛白書ではこれらのミサイルの脅威に対しては、最適な手段による効果的・効率的な対処を行い、被害を局限する「総合ミサイル防空能力」で対処するとしている。

 しかし、現有の装備ではこれらのミサイルへの対処は困難であろう。キーワードは低高度・高速度の目標の探知と撃破である。

 まず、低高度目標の探知について考えてみたい。