ウ.極超音速ミサイル防衛システムプログラム

 国防総省は、極超音速兵器対策にも投資している。しかし、元研究・開発担当国防次官マイケル・グリフィン氏は、米国は、どんなに早くても2020年代半ばまでは極超音速兵器に対する防御能力を整備できないであろうと指摘している。

 2018年9月、米ミサイル防衛局(MDA)は、迎撃ミサイル(interceptor missiles)、極超高速飛翔体(hypervelocity projectiles)、レーザー銃(laser guns)、および電子攻撃システム(electronic attack systems)を含む極超音速ミサイル防衛システムの調査・研究のための極超音速防衛システムプログラムを策定した。

 2020年1月、MDAは、「滑空フェーズのHGVを迎撃するインターセプタ―による地域防衛システム(Hypersonic Defense Regional Glide Phase Weapons System interceptor)」のプロトタイプに関する提案依頼書(Request For Proposal)を発出した。

 続けて、MDAは、ノースロップ・グラマン、レイセオン、レイドス、L3ハリスの4社と、2020年10月までに宇宙配備(低地球軌道)のプロトタイプセンサーを設計するための2000万ドル(1社あたり)の契約を締結した。

 このようなセンサーは、理論的には、極超音速ミサイル防衛のクリティカルな運用要求である突入してくるミサイルを探知・追跡できる範囲を拡大する可能性がある。

 MDAは、2021会計年度に極超音速防衛システムに、2020年度の1億5740万ドルを上回る2億680万ドルを要求した。また、5か年計画(Future Years Defense Program)では6億5900万ドルを要求した。

 加えて、DARPAは、グライド・ブレーカー(Glide Breaker)と呼ばれるプログラムに取り組んでいる。

 このプログラムは、「大気圏上層の非常に遠方にあるHGVを精密に迎撃するための軽量なインターセプタ―(グライド・ブレーカー)を開発する」ことを目的としている。

 DARPAは、2020年度の1000万ドルからは減少したが、2021年度にグライド・ブレーカーに300万ドルを要求した。

(筆者加筆:DARPAは、2020年1月28日、ノースロップ・グラマンが進めるグライド・ブレーカー開発計画に130億ドルで契約を締結したと報じられている)