海外の優秀な人材を採用するための公式な政策(人材採用プログラム)を通じて、中国共産党が米国をはじめ先進国の先端技術を窃取している――。
オーストラリアのシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI:Australian Strategic Policy Institute)」が8月20日、調査報告書の中で驚くべき実態を明らかにした。
ちなみに、「人材採用プログラム」という用語は、ASPIの調査報告書の中で使用されている「talent-recruitment programs」の訳語である。
同プログラムには、中国の初期の高度人材呼び戻し政策である「百人計画」と現在運営されている高度人材招致政策である「千人計画」が含まれている。
(「百人計画」と「千人計画」については後述する)
同報告書によると、中国共産党は、海外に600に上る「海外人材採用ステーション」を設置し、同ステーションが現地の科学者に関する情報を収集し、標的とする人物を特定すると、高額な報酬と破格な待遇という甘言を弄して同プログラムへの参加を働きかけたり、ある時には、秘密情報の提供を条件に同プログラムへの参加を働きかけたりしている。
また、同報告書は、中央政府および地方政府が実施している200に上る同プログラムが、外国の技術と専門知識を梃子にして独自の力を構築しようとする中国共産党の取り組みの中核を成していると指摘する。
さて、同報告書によると2008年から2016年の間に、約6万人の海外の専門家を採用し、日本からも1000人以上の個人が採用されている可能性があるという。
1000人以上の日本人が、既に中国の勧誘に籠絡されていることは驚きであるが、さらにそのような事実が国内で全く認識されていないことはさらなる驚きである。
本稿は、中国の同プログラムに対する対応策を検討することを目的としている。
はじめに、中国の同プログラムの概要について述べ、次にASPIの調査報告書の要旨について述べ、最後に、わが国の取るべき対応策を述べる。