(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
今年の夏は、いつもと違う。いうまでもなく、コロナ禍にあるからだ。
いわゆる水際対策の遅れから、中国湖北省武漢市で昨年12月に確認された新型コロナウイルスが日本に上陸すると、国内で感染が拡大し、4月には改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出された。その効果もあってか、5月には感染拡大も終息の方向に向かったが、6月から経済活動を再開すると、東京を中心に再び感染が広まっている。
国と地方の方針バラバラで困惑する国民
東京都では7月に入ると、1日ごとの新規感染者数が100人、200人、300人と増え続け、ついには400人を超えるようになり、8月には3桁を割らない日はなくなった。これに連鎖するように全国でも感染者が急増している。
しかし、政府は感染予防を呼びかけるだけで無策だ。
9日に会見した安倍晋三首相は、緊急事態宣言の再発令に慎重な考えを示し、現状について「感染者数の増加に対し、入院や重症化する方々の割合は低い状況が続いている」と言い訳する。菅義偉官房長官も「大事なのは重症者の数だ」と会見で繰り返す。確かに、東京都でピーク時に105人だった重症者が、8月には20人前後で収まっているなど、不思議な状況が続く。それをいいことに、むしろ経済活動を促進させるため、7月に東京を除外してはじめた「Go To トラベル キャンペーン」を継続している。
この状況に、小池百合子東京都知事は8月3日から、都内の飲食店とカラオケ店の営業を夜の10時までとするように要請。さらには、このお盆の帰省を控えるように呼びかけた。東北をはじめ複数の県知事も、東京からの帰省を自粛するように表明している。ウイルスを持ち込まれたくないからだ。それでも安倍首相は、9日の会見でお盆の帰省は「一律の自粛を求めるものではない」としている。
国と地方の政策はまったくあべこべになっている。結局、帰省を控えるべきなのか、個人の判断に委ねられることになり、コロナ対策の先行きが不透明になっている。
ところが、ここへきて“打つ手なし”の安倍政権に、「神風」が吹きそうなことが起きている。