台湾・台北の中正紀念堂で衛兵交代式を見学する観光客(写真:AP/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 新型コロナウイルス肺炎(以下「新型肺炎」)は香港、台湾の「反中世論」に決定的な影響を与えることとなった。特に台湾は、新型肺炎を理由に着々と「中国デカップリング(切り離し)」を進め、蔡英文政権の支持率上昇につながっている。

 新型肺炎がアウトブレイクする以前、香港では「反送中デモ」から始まった「復光香港 時代革命」運動が高まりを見せていた。香港区議選挙では民主派が圧勝、親中派議員が軒並み落選する結果となり、習近平政権をうろたえさせた。また香港デモの影響で、台湾有権者は「一国二制度による中台統一」シナリオに対して強い反感を持つようになり、1月11日の台湾総統選挙では反中路線を掲げる現職の蔡英文候補が圧勝、立法院(議会)の民進党が過半数を維持する結果となった。

 この台湾総統選は、米中対立が激化する中で、国際社会の再構築の行方を左右する重要な選挙の1つとみられていたが、この選挙後、さらに台湾や香港の中国離反を後押ししているのが新型肺炎だ。

 台湾総統選が行われた1月11日、武漢ではすでに新型肺炎がアウトブレイクしていた。だが、その日は湖北省の人民代表会議・政治協商会議(両会)の開幕日であり、政治イベントに集中するため湖北省当局はその後1週間、感染増を隠蔽し続けた。

 台湾総統選はさほど新型肺炎の影響を受けずに行われたが、「習近平の敗北」ともいうべき形で終わり、習近平政権として新たな対台湾政策を打ち出さねばならないタイミングで、新型肺炎が武漢から全国に蔓延。対台湾、対香港政策どころか、内政対応で手いっぱいの状況に陥った。