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ほとんど人影のない中国・北京のショッピングモール(2020年2月28日、写真:AP/アフロ)

(文:後藤康浩)

 中国の「新型コロナウイルス」感染は、習近平政権の強権的な押さえ込みで、拡大ペースが落ちてきた。早めの春到来で気温が上がってウイルスの活動が低下すれば、3月中旬にも山場は越えるだろう。

 だが、感染拡大阻止優先で脇に置かれていた経済は、重篤な状態に陥っている。

 ヒト、モノの動きが止まり、「売り上げゼロ」企業が続出しているからだ。

 市民は外出を控え、最低限の食品と医療関連の購入、スマホゲームのダウンロードくらいしかお金を使わず、消費は想像を絶する落ち込み。

 投資もウイルス対策の病院関連以外はゼロ水準に近い。

 法人税減税、社会保険料減免などの政府の企業支援は、瀬戸際の企業を救うにはあまりに迂遠だ。

 中国経済は「コロナ恐慌」のただ中にある。

工場は全面再稼働からほど遠い

 2月10日、中国の多くの地域では、コロナ感染拡大阻止のため延長されていた春節(旧正月)休暇が明け、企業活動が再開した。とはいえ、現実にはオフィスへの出勤者は制限され、工場も全面再稼働からはほど遠い。

 工業情報省は2月24日の記者会見で、

「全国の中小企業の事業再開は3割程度」

 との分析を示した。

 その後、2月末までに企業の稼働はさらに進んだが、外出や交通が規制されたままの地域では交通量は激減、ショッピングモールは開店休業状態で、街中の商店、飲食店も細々と営業しているだけで、企業は需要喪失に直面している。

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