武漢市の病院で新型肺炎患者の症状について話し合う解放軍の医療チーム(2020年1月30日、写真:新華社/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 新型肺炎は相手を選ばない。泣く子も黙る中国人民解放軍内にも感染が広がっている気配がある。護衛艦や国産空母を備え、世界に海洋覇権を打ち立てようという解放軍も、ウイルス相手では勝手が違うのかもしれない。

 湖北省孝感市の解放軍空軍降兵軍保障部の軍官に新型肺炎感染が確認されたのは1月25日、すぐさま同じ部隊の200人が隔離されたと1月27日に香港蘋果日報が報じている。孝感市は武漢から70キロ離れた小都市。湖北省は解放軍唯一の空軍降兵軍(空降兵15軍)が配置され、武漢全体で5000人以上の兵士を有する。感染の恐れのある兵士たちは軍用機倉庫に隔離されたというが、そこは暖房設備もなく外と気温がそう変わらず、劣悪な環境であると、香港に拠点のある中国人権民主化運動情報センターが指摘していた。

新型ミサイル護衛艦、国産空母にも感染者

 その後、軍内の感染状況についてはほとんど情報がなかったが、解放軍報が2月17日に、東部戦区の多くの軍官兵士が隔離監察を受けており、その中には新型ミサイル護衛艦「常州」艦長・余松秋も含まれていると報じていた。

 小さな記事ではあるが、解放軍内で新型コロナウイルス感染が起きていることを公式に認めた記事だ。過去、エイズやSARSの感染が軍内で発生したときも、解放軍内の感染状況は国家安全にかかわる問題として公表してこなかったことを考えると、この新型コロナウイルス感染はかなり大規模なものではないか、という憶測も流れている。

「常州」は、解放軍艦艇として初めて紅海での船舶救援オペレーションを成功させ、映画「オペレーション:レッド・シー」のモデルともなった解放軍・東海艦隊のエース艦。感染が発生してからは厳格な管理、体温測定と消毒、隔離措置などを行い、今年の訓練、任務においての影響はない、としている。また余松秋艦長は招待所で1月30日から隔離監察を受けており、隔離先で訓練の難題を研究しているという。

 東部戦区の海軍党委員会としては感染予防のために、今年(2020年)上半期の任務を再検討、再計画し、人員が集まる活動や会議活動をできるだけ少なくして簡略化し、電話やテレビなどで会議を行うとした。東部戦区は山東、江蘇、上海、浙江、安徽、江西、福建などをカバーし、戦区機関は南京に置かれ、主に対台湾任務を中心としている。「常州」の属する東海艦隊の機関駐在地は浙江省寧波だ。