大気汚染に反発しない人民

 私は1994年、中国へ進出しようとする企業の方々とともに、北京・上海を訪れた。

 海外の工場が中国に進出し始めた頃で、火力発電所や小さな工場から出る煙、車の排気ガスにより、空気や川の水が汚染され始めていた。

 当時、中国国際大飯店(北京)から、煙突の煙が大量に排出されて流れていくのが見えた。

 上海の発電所の付近では、見学していた多数の日本の企業経営者が、発電所の煙の硫黄成分で、「目が痛い、硫黄の臭いがすごい」と言って、そのひどさに驚いていた。

 2008年北京オリンピックの頃になると、約15年前の大気汚染とは比べものにならないほど強烈な大気汚染になった。

 北京空港に降りると、目は痛いし鼻も詰まる。太陽を直視しても眩しくない。夜、市内のネオンはぼんやりとかすみ、星は当然見えなかった。

 大気汚染の指標を表すPM2.5のデータを見ると、北京2013年2月の春節の全国74都市の大気汚染状況は、平均数値が1立方メートルあたり426μg/m3、日本の環境基準35μg/m3の約12倍だ。

 大原では1100、天津では577、石家荘では527を記録した。日本の環境基準の約15~16倍だ。

 大気汚染は、脱硫装置をつけていない小さな工場から出る煙、発電所から出る煙、各家庭の石炭を燃やす煙、そして車からの排気ガスが大きな原因になっている。

 中国に何度も行っていると、不思議なことに、馴れて大気汚染が気にならなくなる。中国人民は、25年間もの時を過ごし汚染に麻痺しているのではないか。

 知らず知らずのうちに肺などが蝕まれていることに気づいていない。

 今から約25年前、北京にある国家環境保護局にヒアリングに行った。北京の当局は、25年前には大気汚染が問題になっていることに気づいていた。

 担当者は、「中国は大気汚染が問題になることは認識している。空気浄化のために硫黄分を大量に含んだガスを排出する工場には脱硫装置を取りつけたい。日本が資金を出してくれれば、脱硫装置を設置したい」と言っていた。