“海の勝ち組”クジラが天敵・人類に狙われた理由

生物進化を食べる(第10話)哺乳類・クジラ篇

2020.01.31(Fri)大平 万里

 また、クジラの筋肉中には鉄を多く含むミオグロビンとよばれる酸素運搬タンパク質が豊富で、低酸素状態でも長時間活動できるようになっている。体表付近に覆われている分厚い脂は水中での体温維持に役立っており、魚類と同じく必須脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多い。

マッコウクジラ。オスは体長18mにも達する。

 さらに、クジラはその巨大な体ゆえに非常に天敵が少ない生物である。とくにハクジラ類のマッコウクジラの自然界における天敵はシャチくらいしか知られていない。よって、クジラの自然状態での増減は餌となるオキアミや小魚の資源量にほぼ依存していたと考えられている。つまり、クジラは海洋環境に完全に適応した勝ち組の哺乳類だったのだ。

 しかし、人類の登場によって状況は一変する。皮肉なことにクジラの海洋への適応は、捕鯨という手段を持った人類にとっては非常に効率的な資源確保となる要因を兼ね備えていた。すなわち、クジラの桁外れの移動距離を人間の長距離航行できる捕鯨船が、そしてクジラの巨大さを人間の圧倒的な動力の捕鯨砲が凌駕したのだった。

 一旦、捕獲できれば得られるタンパク質・脂質の量は膨大である。その結果、クジラの肉は島国の給食に出され、団塊の世代の胃袋を満たすことになったのである。

 さて、次回は“海に進出しなかったクジラ”と人類との物語である。

第11話へつづく)

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