“海の勝ち組”クジラが天敵・人類に狙われた理由

生物進化を食べる(第10話)哺乳類・クジラ篇

2020.01.31(Fri)大平 万里
クジラ直系の祖先とされるパキケタス。 (©️ N. Tamura)

 クジラの直系の祖先は5300万年前、新生代古第三紀の「パキケタス」とよばれるものである。「これのどこがクジラの祖先なのか」という外観で、蹄もあり四つ足で歩いており、しかも水辺にすら生息してなかったようである。クジラの祖先というよりもウシの祖先と言ったほうがいいように思えるだろう。

 ところが、時代が下って、パキケタスから分岐した4500万年前の「アンブロケトゥス」は、陸以外の新たな環境を求めて海へ進出しはじめた。四つ足はまだ残っているものの、さまざまな体勢から見て、より水中生活に適応してきたと考えられている。

 そして、4000万年前の「バシロサウルス」ともなると、後ろ脚はかなり退化し、クジラらしい形になってきている。

人類という過去最強の天敵が現れる

(上)アンブロケトゥス。(下)バシロサウルス。 (いずれも©️ N. Tamura)

 現在のクジラはこのバシロサウルスから派生して登場してきたと考えられている。ただ、祖先のバシロサウルスは水生といっても、骨の形態や化石が発見される場所などから、それほど活動範囲は広くなかったと考えられている。

 一方、現在のクジラには、大量の餌を探しに北極海と赤道の間を大移動する種もある。これだけの広範囲を移動する哺乳類はクジラ以外にはヒトくらいしかいない。また、陸上の哺乳類のように吐く息を使った発声は水中では難しいので、「メロン器官」とよばれる独自の音波を出す仕組みを発達させた種も登場した。潜水艦と同じく水中のエコーによって100km以上先の相手とも高度なコミュニケーションをとり、個体どうしで社会を形成しているとも推測されている。

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