道具は語る、中華の合理主義とフレンチの形式主義

『キッチンの歴史』で「なぜそれを使うのか」を探る

2019.12.20(Fri)漆原 次郎
キッチンにある料理道具には、それぞれに歴史がある。

 西洋料理を食べることと中華料理を食べることの印象は、それぞれどういったものだろうか。たとえば、フレンチレストランで食事するときと、中華料理屋で食事するときでは、それぞれどんな心地になるか。

 フレンチのほうはよりかしこまり、中華のほうはより気軽に感じで食べる、という人は多いことだろう。

 料理ごとに感じるこうした違いは、どのようにもたらされるのか。その地域での食文化とはどう決まっていくのか。こうした疑問に対する答えを「料理道具」に求め、その一端を明快に示してくれるのが、『キッチンの歴史』(河出書房新社刊)という本だ。地域ごとに根づいている文化が料理道具の技術的発展の方向性を決め、その方向性が食文化のあり方を決めているということを実感することができる。

料理道具が食にどんな変化をもたらしたかを探る

2019年11月に刊行された新装版『キッチンの歴史 料理道具が変えた人類の食文化』。ビー・ウィルソン著、真田由美子訳。

 著者のビー・ウィルソンは、英国で食をテーマに執筆を重ねるジャーナリスト。1998年から2003年まで評論週刊誌『ニュー・ステイツマン』のフードライターとなり、その後『サンデー・テレグラフ』に食のコラムを寄稿している。邦訳書は2014年に刊行されたあと、2019年11月に「新装版」も刊行された。

 著者は「キッチンで使う料理道具が、私たちの食の中身や食のあり様、食に対する考え方にどのような変化をもたらしたかを探っていく」ために本書を執筆したという。章ごとに、料理道具あるいはその使い方についての主題が設定されており、順に「鍋釜類」「ナイフ」「火」「計量する」「挽く」「食べる」「冷やす」「キッチン」と展開していく。

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