ミンククジラ。体長8mほど。かつては学校給食にも出された。

 私たちが日ごろ食べているもののほとんどは生物である。そして、多くの食材の直系の祖先は私たち人類より先に地球上に現れている。なぜヒトは「その食材」を食べることになったのか。その疑問を解くカギは、この地球上でヒトと生物がたどった進化にある。ふだん何気なく食べているさまざまな食材を、これまでにない「進化の視点」で追っていく。それぞれの食材に隠された生物進化のドラマとは・・・。

第1話:シアノバクテリア篇「イシクラゲは27億年の生物史が詰まった味だった」
第2話:棘皮動物篇「昆虫よりもウニのほうがヒトに近い生物である理由」
第3話:軟体動物篇「眼も心臓も、イカの体は驚くほどハイスペックだった」
第4話:節足動物篇「殻の脱皮で巨大化へ、生存競争に勝ったエビとカニ」
第5話:魚類篇「ヌタウナギからサメへ、太古の海が育んだ魚類の進化」
第6話:シダ植物篇「わらび餅と石炭、古生代が生んだ『黒い貴重品』」
第7話:鳥類篇「殻が固い鶏の卵は、恐竜から受け継いだものだった」
第8話:真菌類篇「酒とキノコの味わいを生んだ、共生と寄生の分解者」
第9話:被子植物と果実篇「動けない植物がとった『動物を利用する』繁殖戦略」

 学校の給食でどんな献立を楽しみにしていたかは、世代によってかなり違うことだろう。頻繁に登場する献立が、時代によって変遷してゆくからだ。たとえば、地域にもよるだろうが、1970年代以前は米飯の給食はなく、パンをメインとした給食であり、きなこパンの日が楽しみだった。

 逆に、徐々に登場しなくなっていったメニューで、個人的にかなり楽しみだったのが「クジラカツ」、もしくは「クジラの竜田揚げ」だった。給食にトンカツはなかなか出てこないが、クジラの竜田揚げはしばしば出てくる時代がたしかにあったのである。

 なぜ、「給食に鯨肉」が定番だったのだろうか。給食の目的は「より安く、より栄養価の高い食品を児童・生徒に供給する」ことだろうから、以前は、大量に供給できる安価で良質なタンパク質が鯨肉だったのであろう。

 クジラ1頭の重さは、ミンククジラで約5トン、地球で最大規模の動物であるシロナガスクジラであれば100トン近くにもなる。比較的小型のミンククジラであっても、一頭からとれる肉の量は牛肉に換算すると約15頭分になる。しかも、クジラは捕獲するまでは大変だが、牛や豚と違って餌も飼育スペースも必要ない。日本各地に「鯨塚」があることからも、古くからクジラは豊穣の海の恵みとして珍重されてきたことは想像に難くない。