ヌタウナギからサメへ、太古の海が育んだ魚類の進化

生物進化を食べる(第5話)魚類篇

2019.08.30(Fri)大平 万里
サメの一種、ヨシキリザメ。肉はかまぼこの原料、またヒレはフカヒレとして食用になる。私たちにとって豊富な食料資源でもある「魚類」は、5億年前もの昔から、多様な進化を遂げてきた。

 私たちが日ごろ食べているもののほとんどは生物である。そして、多くの食材の直系の祖先は私たち人類より先に地球上に現れている。なぜヒトは「その食材」を食べることになったのか。その疑問を解くカギは、この地球上でヒトと生物がたどった進化にある。ふだん何気なく食べているさまざまな食材を、これまでにない「進化の視点」で追っていく。それぞれの食材に隠された生物進化のドラマとは・・・。

第1話:シアノバクテリア篇「イシクラゲは27億年の生物史が詰まった味だった」
第2話:棘皮動物篇「昆虫よりもウニのほうがヒトに近い生物である理由」
第3話:軟体動物篇「眼も心臓も、イカの体は驚くほどハイスペックだった」
第4話:節足動物篇「殻の脱皮で巨大化へ、生存競争に勝ったエビとカニ」

 以前、ある知り合いから「ウナギを家でご馳走する」と誘われたことがある。大好物なので喜んで知人宅に向かったが、出てきたのはこんがりと焼かれた巨大なうなぎの肝のようなものだった。口に入れると、カリッとした歯触りに続いて少しエビに似た強烈な滋味が口に広がって、非常に美味しかった。

 しかし、少なくとも私の想定した「ウナギ」ではないことは明らかであった。

 その正体は、クロヌタウナギ。「ウナギ」といっても、土用の丑の日に大量消費されるあのウナギとは分類上まったく違う生物である。近縁のキタクロヌタウナギは、日本海側では「棒アナゴ」として売っていることもある。滋養強壮食として話題に上るヤツメウナギも、このクロヌタウナギに近い仲間だ。

クロヌタウナギ。最近の研究からキタクロヌタウナギの可能性も。全長は40センチほど。 (出所:マリトコ WEB魚図鑑「クロヌタウナギ」

脊椎動物の「ご先祖様」、魚類にあり

 クロヌタウナギは一見、細長い形をしているため「ウナギ」のように見えるが、まず顎(あご)がない。 さらには硬い骨もなく、軟骨でできた「脊椎(せきつい)」と、その原型にあたる「脊索(せきさく)」の構造があるのみである。つまりは脊椎動物の元祖といえる生物なのだ。

 さて、こうした顎のない原始的な魚は、いつごろ出現したのだろうか。硬い骨がないため、はっきりした全身骨格の化石がなかなか見つからないので、分からないことも多い。だが、「歯らしき部分」から、このクロヌタウナギに近い生物が古生代カンブリア紀(約5億年前)にはすでにいたであろうことが分かっている。

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