ヌタウナギからサメへ、太古の海が育んだ魚類の進化

生物進化を食べる(第5話)魚類篇

2019.08.30(Fri)大平 万里
甲冑魚のひとつ、ドレパナスピスのCGイラスト。
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 また、表皮は鱗の代わりに、歯と同じ成分でできた「皮歯(ひし)」とよばれる硬い構造で覆われている。いわゆる「サメ肌」だ。これは古生代に絶滅してしまった甲冑魚などの特徴を残したものと考えられている。

 サメの祖先とされる「ドリオドゥス」は、約4億年前の古生代デボン紀にはすでに登場している。そして、その後ずっと地球の海に生きつづけ、約1億年前の中生代白亜紀には現生のサメと同じような姿形の種が登場する。少なくとも中生代以降1億年以上にわたって、サメは実質的に海の覇権を握りつづけているのだ。

 通常、わが世を謳歌した生物種ほど、ある時期に絶滅してしまうものだが、サメのしぶとさは生物進化の中ではかなり特異な例なのである。

意外なところにサメの欠点

 進化の勝者ともいえるサメにも、実はある欠点がある。後退できないことだ。

 映画のモデルにもなったホホジロザメが獲物を捕らえる映像などを見ると、高速で迫ってきたり、海上を大ジャンプしたりして、その迫力ある運動能力に圧倒される。しかし、いったん獲物を捕り損ねると、すぐに方向転換できないために大回りで旋回して進行方向を定めるほかない。

 実際、海中を泳いでいるサメに触れることは比較的容易で、安全なサメであれば背びれにつかまっていっしょに泳いだりもできる。サメの胸びれは遊泳時の揚力をつくることにほぼ使われ、急な方向転換に使えるほど自由に動かせないのだ。複雑な動きを瞬発的にコントロールするための足場、すなわち「支点・力点」が軟骨では頼りないためだろう。

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