そして加速膨張する解は、方程式に宇宙項を入れた場合に得られるのです。正しい方程式は宇宙項を入れた方程式ということになります。

 かつては不要とされ、生みの親のアインシュタインに「ポカ」と言われた(とガモフに言われた)宇宙項が、まさかの復活です。

(定常解を得るために加えられた宇宙項が、今度は加速膨張解を得るために必要なのは、つじつまが合わないように思えるかもしれませんが、宇宙項の値を調整すると、解の膨張を止めたり加速したりできるのです。)

ダークエネルギー登場(♪帝国のマーチ)

 宇宙項は、この宇宙空間を満たすエネルギーと解釈されます。加速膨張の発見は、正体不明のエネルギーが宇宙空間を満たしていることを意味するのです。

 そんなエネルギーはこれまで観測されたことがなく、誰も存在を知りませんでした。どんな観測装置でも見えないので、「ダークエネルギー」と呼ばれることになりました。

(ただし「ダークエネルギー」は日本だけの発音で、英語に近いカタカナなら「ダークエナジー」、ドイツ語に近いカタカナなら「デュンクレエネルギー」です。)

 ダークエネルギーの総量はこの宇宙の存在の69%を占めると見積られます。(あとのほとんどは、ダークマターという、これまた正体不明の物質です。人類が知っている通常物質は、宇宙の存在の5%程度と見られています。)

 これが判明したのは、20世紀の終わりごろのことです。突如として、宇宙はわけの分からない大量のエネルギーに満たされました。ハッブルの発見以来のびっくりです。

 ノーベル賞選考委員会もびっくりしたようで、2011年のノーベル物理学賞は、「遠方の超新星の観測による宇宙の加速膨張の発見」に対して与えられました。「超新星宇宙論プロジェクト」というグループのサウル・パールムッター教授と、「高赤方偏移超新星探索チーム」のアダム・G・リース教授とブライアン・シュミット教授が共同受賞しました。

(ハッブルの発見からビッグバン宇宙論が受け入れられるまで20年以上かかったこと、結局ハッブルはノーベル賞を受賞しなかったことを考えると、ダークエネルギーはずいぶん厚待遇です。)