発見以来20年間、謎のままのダークエネルギー

 ダークエネルギーの発見以来20年間ほど、研究者はその正体をあれこれ考えてきましたが、どうもしっくりする答えは見つかっていません。

 これほど考えても正体が分からないので、「やっぱり宇宙膨張、加速してないんじゃね?」という、潔(いさぎよ)すぎて元も子もないような解決策も、複数の研究者によって検討されています。

 例えば、Ia型超新星爆発の明るさが昔と今で実は違うという解決策です。

 Ia型超新星を用いる距離の測定は、それがもしも暗く見えたら遠く、うんと暗く見えたらうんと遠くにあるという原理で行ないます。これは、どのIa型超新星も(ある種の補正をした後では)明るさが同じという仮定に基づいています。

 しかしうんと遠くに見えるIa型超新星は、うんと昔に爆発したものです。何十億年も昔にさかのぼると、例えば銀河内物質の元素組成が違ってきます。超新星爆発を起こす星の元素組成が違うと、明るさが違ってくるとしたらどうでしょうか。宇宙膨張が加速しているという主張の根拠が怪しくなります。

ようやく今回の発表の話に

 さて、ようやく今回の発表の話になりました。宇宙論は人々が真実に至るまでの過程が面白いので、ついつい前置きが長くなってしまいます。

 今回の発表は、「Ia型超新星の明るさが時代によってホントにずれてるっぽい!」という観測結果です。

 Kang博士、李教授らのグループは、比較的近くで発生したIa型超新星の属する母銀河を精密に観測し、その年齢を求めました。すると、超新星の明るさと年齢の間に相関が見つかったというのです。

 今回の結果を考慮すると、宇宙膨張は加速してないとしても、これまでの観測結果を説明することができるといいます。