一般的に、中小河川の増水に比べ大型河川(ここでは江戸川)の増水は少し後になる。このため、中小河川の水を大型河川に流すことで水量のバランスをとることができる。ところが今回は、多摩川や千曲川のような大型河川でも早い時期から水位が上昇したところが多かったようだ。江戸川への排水もコントロールが難しかったのではないかと推測される。

周囲の中小河川から流れ込んだ水を貯める第1立坑。直径30m、深さ70mの巨大な縦穴だ。12日以降にはここに大量の水が貯め込まれた

 12日19時から14日14時までに排水された量は、表1をもとに計算すると約1700万m3である。東京ドームに換算すると約14杯分という量になる。2015年の台風17、18号襲来(「平成27年9月関東・東北豪雨」)の際は、1900万m3を4日かけて排水したという。今回はそれに近い量を半分以下の期間で排水したことになる。

 首都圏外郭放水路は施設見学を実施しており、調圧水槽や立坑の内部の様子を見学できる。さすがに12日は施設見学が中止されたが、13日には実施されたようだ。その日は調圧水槽の内部にはまだ水がある状態のため、トップページの写真のように下に降りて歩くことはできなかったはずだが、調圧水槽の上部には壁沿いに歩行通路がある。そこから調圧水槽の中を渦巻く濁流を見ることができたと思われる。

 総工費2300億円、13年の工期で2002年に完成した首都圏外郭放水路が担う役割は、温暖化が進むこれから、ますます重要なものとなるだろう。