立坑の底は70m下。ブラックホールに吸い込まれそうだ

 埼玉県春日部市。郊外のサッカー場の真下には177m×78m、高さ18mという巨大な空間が広がっている。これは周辺の中小河川の洪水被害を軽減するために作られた「首都圏外郭放水路」の重要な施設の一つ、「調圧水槽」である。

 前編では、“土木萌え”には「地下神殿」としてよく知られる調圧水槽の内部と、なぜこの施設が作られたかを紹介した。

前編の記事はこちら
“土木萌え”なら外せない絶景スポットがこの真下に
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56242

立坑内部のキャットウォークと階段

 後編の今回は、見学コースの一つ「立坑体験コース」でいよいよ深さ70mの立坑内部の探検に出発する。立坑の周りにあるキャットウォークを一周したあと、中央に見える階段を降りていく。高所が苦手な人はこの先の写真にも気をつけて!

 さらに、「ポンプ堪能コース」では調圧水槽に貯まった水を排出する「超強力ポンプ」の心臓部にも迫る。見学コースの概要は前編の最終ページ(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56242?page=5)を参照してほしい。

 首都圏外郭放水路の断面図は前編にも載せたが、再掲しておこう。

首都圏外郭放水路の断面図。5つの河川の水を立坑を経由して調圧水槽に送り、ポンプを使って江戸川に排水する
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 河川が増水したときに、水を取り込むのが「立坑(たてこう)」だ。直径30m(第4・第5立抗は少し細い)、深さ70mの巨大な円筒形の空間だ。

 5つある立坑をつなぐのが、地下50mにある地下トンネルである。切り羽に泥水を供給・加圧しながらトンネルを掘削する泥水加圧式シールド工法で作られたトンネルは、内径が10mあり、立坑から流入した水が流れる地下の川となる。そのときの水流をトンネル内で見てみたいものだが、見たら生きて地上に戻れないだろう。

 水はトンネルを流れ、第1立坑に、そして地下神殿こと「調圧水槽」にも流入する。調圧水槽内の水はポンプで汲み上げられ、排水口から江戸川に排水される。