「鮫ヶ浦水曜日郵便局」のある鮫ヶ浦。現在漁港としては使われていない

 前編(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54892)で不気味なトンネルを通り抜け、「鮫ヶ浦水曜日郵便局」に着いた牧村あきこさん。目に入ってきたのは海中へと続いている線路だった。調べてみると、そこには意外な歴史が隠されていた。(JBpress)

 前編で書いたように、「鮫ヶ浦水曜日郵便局」公式サイトに掲載されていたトンネルの写真に魅了された私は、郵便局のある宮城県東松島市の宮戸島へ行くことを決めた。心をわしづかみにされたトンネルの中を歩き、写真通りの光景を見たときは、何とも言えない不思議な気持ちになった。誰もいない(水曜日ではないので)郵便局の前に立つと、このプロジェクトに関わった人々のそれぞれの想いが聞こえてくるようだった。

 郵便局が建つ場所は、鮫ヶ浦の大鮫という入り江にある。宮戸島の東側にある嵯峨渓は、太平洋の荒波や風雨に浸食された見事な景観で、岩手県の貎鼻渓(げいびけい)や大分県の耶馬渓(やばけい)と並ぶ日本三大渓の一つとして知られている。鮫ヶ浦は嵯峨渓の北端に位置するのだが、リアス式のぎざぎざした海岸線の奥にある入り江のため、打ち寄せる波はとても穏やかだ。

 私が訪れた日は秋曇でほぼ無風。入り江は波立つこともなく静かに水面が揺れていた。郵便局を背にして、そんな穏やかな入り江をぼんやり眺めていると、少し離れたところに線路のようなものがあることに気が付いた。

鮫ヶ浦の入り江(大鮫)。郵便局から北西方向を臨む。手前に1本、奥にもう1本線路のようなものが見える