人生の大きな転機が来て、思い悩んだり不安になったりすることがあっても、いつもと同じように三度の食事はしなければならない。いや、それだからこそ、1回1回の食事を大事にした方がいい。
人生の大波が来てリセットせざるを得なくなる状況は、映画や本によく描かれている。そして、注意して見るとそのときに出てくる料理が物語で大きな役割を果たしていることがある。
今回は8編の映画および本を取り上げ、登場人物が味わった8つの料理を再現してみる。詳しいレシピと手順は書ききれないので、別に用意したWebページ(http://officemakimura.sakura.ne.jp/wp2/)を参照してほしい。もちろん、「まったく同じ」というわけではなく、想像した部分、作りやすいように簡略化した部分もある。
自分で作るのでも、誰かに作ってもらうのでもいい。その料理を味わうことで、そのとき登場人物がどういう心境だったかの一端がリアルに感じられるだろう。そして、実際にあなたが人生の転機を迎えたとき「自分だったらどういう料理を味わいたいか」「そのとき何を感じるだろうか」、そのようなことも考えてみてほしい。
フレンチトースト(クレイマー、クレイマー)
『クレイマー、クレイマー』は、1979年アメリカで公開され、第57回アカデミー賞作品賞を受賞。40年近く前の映画だが、ご存知の方も多いだろう。
ストーリーはシンプルだ。テッド・クレイマーは重役昇進目前のやり手の広告デザイナー。約束された未来に確かな手ごたえを感じたある日、意気揚々と帰宅をしてみれば、目を赤く泣き腫らした妻から、突然の三行半を突き付けられる。妻が出ていくという現実を受け入れられないまま、6歳の一人息子ビリーとの悪戦苦闘の日々が始まる。