備蓄の食料も底をつき、最後の食料が分配された彼らは、ひとときの夢を見る。あたたかな照明に彩られたテーブルに突如出現する数々の料理。人生最後の晩餐には何を食べるか? そんな問いかけに答えるような品々が並ぶのだ。

 ある鉱夫の目前には、そこにいるはずもない母親が現れ「ガリガリじゃないの。食べな!」と大皿を息子の前に差し出す。鉱夫は「チャルキカンだ!」と目を見開き、皿の上にある目玉焼きを崩しはじめる。チャルキカン(Charquicán)とは、シチューのような野菜と牛肉の煮込みで、上に目玉焼きをのせて食べることが多いと聞く。いわばチリのおふくろの味だ。

 主演俳優が映画序盤で叫ぶ。「助けは必ず来る。会社がやらなかったら家族がやる。素手で掘ってでも来るに決まっている。俺たちは出られる。俺がそう信じると決めたんだから出られるんだ。33人みんなで」。多くの日本人からすると「大げさな」と思えるほどの熱い家族愛が画面からあふれてくる。

「おふくろの味」は世界中にあるが、作り方はシンプルで素朴な味のものが多い。なのに、人生の最後に口にしたいと思うのは、そんな料理だ。それは、実際の食べものだけではなく、母親や父親など家族から受けた愛情とセットで記憶されているからだろう。

 大事なアドバイスを一つ。「チャルキカン、ちょっと面白そうだから作ってみるか」と思ったら、チリパウダーはぜひ入れてほしい。これを入れると入れないでは、味のパンチが全然違う。

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