「必要な酸素が不足している!」という情報が得られ次第、HIFは活動を始めます。

「会社にお金が足りない!」となったら調達担当は何をするか?

 資金ルートを確保しようとしますよね。HIF低酸素誘導因子という細胞の調達担当も同じように活動します。

 生物の体の中で細胞が酸欠を感じたら・・・酸素を運んできてくれるのは赤血球であり、またそれをもたらすのは血管ですから、「血管を創れ~!」「資金ルートの確保だ~!」と全社を挙げて指令を出すことになる。

 逆に慢性の経営危機にあるような会社では、常に資金調達で火の車が回ることになるでしょう。そういうがんのような会社のような細胞として、がん細胞を考えることができます。

がん細胞と酸素の関係
ベンチャーとしての転移がん

 この連載で時折書くことですが、私は小学1年のとき、父親が肺がんで死にましたので、また似たような因子を私自身も持っていますので、がんのメカニズムに長らく興味を持ってきました。

 がん細胞はあまり呼吸をしないんですね。酸素も使わないわけではないようですが、主として奴らは糖を食べて生きていて、酸欠になりやすい。

 そしてむやみやたらと増える。増え過ぎ、大きくなり過ぎると、その中の方には糖が行き渡らなくなって死んでしまう癌細胞が出てくる。がんの真ん中の方が死んで腐ってしまうと大変な状況になります。

 しかし、がん細胞のほうも「必死」ですから、何とかしたいわけです。だんだん大きくなると内部の細胞は酸欠状態・・・資金繰りが悪くなるので、HIFが登場し、血管を作れということになる。

「血管ルート」ができると、それを通じて外部から、がん細胞にとって大切な糖が入ってくることになりますが、同時にこの「ルート」は「脱出口」としての意味ももっている。