熊本城(熊本県の観光サイトより)

 我が国が本格的な人口減少社会に突入し、特に地方において地域共同体の希薄化・空洞化が進むなか、共同体に貢献する「地域人材」の育成の重要性が高まっている。

 特に、高齢化による医療への需要増が急激に進み、医療分野において地域に密着した業務を行う人材の育成は重要である。しかしながら、現在において都市部と地方部の医療格差は依然大きい状況にある。

 8月、私は雑誌「剣道時代」に寄稿したご縁から、東京大学運動会剣道部の先輩に当たる上昌広氏の運営する「医療ガバナンス研究所」にてインターンシップに参加していた。

 医療ガバナンス研究所は、「現場で当事者として活動すること」を重視し、東京に限らず全国各地に活動領域を広げている。

 また、実際に現地にて活動する前段階として、各地の実情について統計を基に綿密な調査を行う重要性も、インターンシップを通し強く実感した。

 さらに、インターン中の勉強会において、鹿児島県出身の下豊留佳奈氏より(島津氏を軸として)鹿児島県の持つ歴史的経緯についてご教授いただき、現在にも強い影響を及ぼす歴史と、とりわけ九州地方の特異性に強い関心を抱いた。

 私自身、育ちは東京都であるが、父方の祖父が熊本県八代市出身であり、幾度となく足を運んだこともある馴染み深い土地でもある。また、剣道家である祖父の影響もあり私は剣道を始めたが、剣道においても熊本県は強豪県として名高い。

 以上の理由から、上氏の勧めも受け、3大都市圏以外の県の一つの例として、熊本県の医療分野の実情と、それを生んだ歴史的経緯について調べることにした。

 その結果、熊本県は「医療県」として全国各地の中でもひときわ目立つ特色を持っていることが分かった。

 まず、医療施設の整備について、「人口10万対病院病床数」(平成29年)では、熊本県は47都道府県中3位の1961.8と、全国平均(1227.2)の1.5倍以上の値を示している。